2017年 09月 09日 ( 1 )

映画「ダンケルク」

 私は若い頃から戦争映画は好きなジャンルの一つです。人が殺されるシーンを見るのは、かなり心が痛むのですが、戦争とは何かを考えるときに、映画のシーンに身を置いて、生と死について切実感をもって考えることが好きなのかもしれません。
 タイトルの映画は、これまでとは映画の作り方そのものが違うようです。一般的な映画では、主人公の人間ドラマを描きます。そのために、戦場になる前の生活や人間関係がとても大事にされます。それがあるからこそ、観客は主人公に共感し、感動し、涙を流すのだと思います。たとえば「はだしのゲン」を例にあげると、原爆投下までにゲンの家族の様子がかなり克明に描かれていますよね。あのシーンがあるからこそ、観客は原爆によって一つの家族が失われる悲しみを実感するのだと思います。
 ところが、この映画は、まったくそのような場面はありません。描こうとしているのは戦場の場面のみ。しかもかなりリアルに描かれています。特に海に沈むシーンは自分自身が海底に引き込まれ息ができないような状況になります。つまり、戦場の臨場感をこの映画は描こうとしています。映画を見ている人は、まさしく戦場に足を踏み入れ、自分自身が兵士となってダンケルクを脱出しようとするのです。
 そのために、この映画では一人の人間があまり丁寧に描かれていません。私はこの手法には反対です。やはり個人として戦争を描くべきだと思います。戦争は国と国の戦いであるわけですが、その実像は個人のいのちや人権が奪われ、家族を失う悲しいものなのだということを描くことが大事だと感じています。
 この映画の監督は、戦場の現実を描くことに成功していますが、人間を描くことに成功していないと思います。一つの命があっけなく奪われるのが戦争であることは映像で教えてはくれていますが、人々の感情まで届いていません。

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by shin-pukupuku | 2017-09-09 17:39 | 映画 | Comments(0)