カテゴリ:本( 236 )

新書版 大河ドラマ

 呉座勇一著『応仁の乱』(中公新書)を読みました。ベストセラーなので、おそらく面白いところがたくさんあるだろうと思いながら読みましたが、そうでもありませんでした。なぜ、ベストセラーになったのかがわからない感じでした。歴史ファンにとっては面白い内容が盛り込まれているのだろうと予想できますが、如何せん、私は戦国時代とかにはほとんど関心がないために、今一つピンときませんでした。
 ただ一つ言えるのは、この時代の人間ドラマが描かれていて、それがきっと興味を湧き立たせるのだろうなあということでした。当時の人間の生きざまが見事に読者に伝わる本だったと思います。それが戦国時代のイメージを変えることに成功しているのでしょうか?まさしく、新書版大河ドラマでしょうかね。

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by shin-pukupuku | 2017-10-31 17:04 | | Comments(1)

最新号

『歴史地理教育』10月号を読みました。テーマは「税はだれのもの?」というものでしたが、全般的に目をひく論考はほとんどありませんでした。ただ、三木義一「主権者として税を学ぶために」というインタビュー記事は面白いところがありました。その中では戦後の歴史の中で「年末調整」がどのような経緯で日本社会に導入されたのかということが書かれています。年末調整という仕組みが、天引きされる税に関心を主権者に持たせなくしてしまうシステムであり、そのため税務署も知らないというサラリーマンも多いという指摘です。
 たしかにそのとおりだと首肯することでした。日本では税の使い道に関心がいかないのは、この年末調整によるところが大きいと思います。このシステムは時の政府のねらうところでした。主権者意識をそぐことに成功しているからです。
 私はこの3月に税の申告をしました。初めてのことでした。手続きはかなり面倒でしたが、実際に書類を整理していくことで、税についての関心を持つことができました。年末調整の簡単な手続きは、主権者としての税の使い道に対する主権者意識を失わせている気がたしかにします。
 それにしても、今回の選挙で「消費税10%」についての各党の公約を見て残念です。日本の財政状況を考えると、わたしはやらざるをえないと思っています。リベラルな政党はヨーロッパでは増税派のようです。増税することで社会保障制度を豊かなものにしていくというのが基本的なスタンス。ところが日本は…そこは残念でなりません。

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by shin-pukupuku | 2017-10-10 07:02 | | Comments(0)

 この本の著者は、東京大学の建築学専攻の教授です。住宅建築の在り方を設計や建物から論じるのではなく、そこで暮らす人びとに注目して、建築について、さらには町づくりについて論じている人です。一読してとても面白いと思いました。
 第1章では「時間」を手がかりにして、そこで暮らす人びとの多様性、建物の機能や用途について論じ、第2章では、「家族」に着目し、親世帯と子世帯の家族間のやりとりの多様性を論じています。第3章では、「引っ越し」を切り口にして、第4章では「居場所」を論点とし、最終章では今後町を住みこなせるものとしていくために考え得る具体的な諸方策を述べています。
 この本の基底には、多様性の尊重が重要であることが語られています。ニュータウンにおいても、一戸建ての住宅だけでなく、若い世帯のためのアパートやマンションを混在させることが、その町を維持させていくことに必要な要素であり、高齢化したために手放した一戸建ての中古住宅を購入するのは、その町で暮らす若い世帯であることを、論者はデータをもとにして実証していきます。随所にデータによる説明があり、そのために論じる内容は説得力があります。
 なかなか面白い知的刺激を受ける本だったと思います。

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by shin-pukupuku | 2017-09-27 09:50 | | Comments(0)

井上靖『化石』を読んで

 タイトルの本は、「昭和40年(1965)11月15日より昭和41年(1966)12月31日までの朝日新聞朝刊に三浦綾子「氷点」に続く新聞小説として409回に渡って連載」された小説のようです。そのためかなりの長編であります。
 私が驚くのは、1965年の段階で、井上がガン告知という「生と死」に関わるテーマを取り上げ、そこから生きる意味を読者に問いかけている点です。おそらくこの時代は、ガン治療は不十分であり、ガンという診断は死に結びつくと考えられていた時代です。家族内でも告知はなされず、周囲は病名が本人に漏れてしまうことをおそれながら、最後の看取りをしていたころだと思います。
 そんな時代に、ガン告知と最後の生の時間をテーマに取り上げたということは、井上靖の先見性を感じさせます。
 また、井上作品はその独特な情景描写と人物の情感を描き出す手法で読者は知らず知らずのうちに文章に引き込まれていきます。私も何度も夢中になって文章を追っている自分がいました。それほど、興味深く読むことができたと思います。
 主人公は50歳半ばの社長です。主人公が独白する言葉には、考えさせられるものがたくさん詰まっています。死を目前にして自分の人生を振り返り、残された時間をどのように意義深く生きていくのかーそれは当事者にならないとわからないところでもありますが、この主人公に自分自身を投影することで、読者は自分の人生とこれからの生き方を考え、見つめなおしていくのだと思います。
 非常に面白い小説でした。井上靖はさすがにすごいということを感じさせるものだと思います。

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by shin-pukupuku | 2017-09-26 10:33 | | Comments(0)

 タイトルの著者は毎日新聞の記者です。フランス留学と特派員の時に、第一次世界大戦や第2次世界大戦の悲惨な記憶となる事実を中心にして生存者へインタビューしたり実際に街を訪問してまとめた著書でした。非常に興味深く読むことができました。その理由は、私自身がフランスの現代史についてよく認識していないからです。
 第一次世界大戦の時の不発弾が今でも戦場となった地域に多数存在すること、永田丸という日本の商船が、第一次世界大戦の時に米を積んでフランスへ向かっていた時にドイツの攻撃によって沈没したことなど、真新しい事実を教えてくれるものでした。
 また、第2次世界大戦時にペタンが「ヴィシー」に政権を打ち立てたことは知っていましたが、ヴィシー政権といわれることに、「ヴィシー」の人々は嫌悪感を抱いていること、それはペタン政権はドイツに協力し、フランスのユダヤ人を強制収容所に送りこんだ事実に対する記憶からくるものでした。
 さらに驚いたのは、オラドゥール村の虐殺です。村ごとドイツ兵に虐殺され、今でも当時のままに保存されている村です。そのことについて私も覚えていましたが、具体的な証言や、ドイツとの和解の歴史についてはまったく知りませんでした。
 また、レジスタンスの具体的な事実やアルジェリアの独立戦争の時のアルキと呼ばれるフランス軍に協力したアルジェリア人のその後の悲しい歴史についても知りませんでした。
 フランスは現代史における負の記憶に対して、今でも向き合おうとしている印象を持ちました。特に長年敵対関係にあったドイツとの関係については、真摯に向き合い、ドイツの人々と友好的な未来を築こうとしているようです。フランスの現代史にも負の記憶がたくさんあります。歴史的事実を事実として受け止め、歴史教育に生かし、将来の社会を築こうとする動きは、日本でも学ぶべきことであろうと思いました。

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by shin-pukupuku | 2017-09-23 08:53 | | Comments(3)

興味を惹かれた

 アマノジャク氏の紹介もあって、上原善広『差別と教育と私』(文藝春秋)を読みました。上原については、私も以前から注目していたノンフェクションライターです。これまで、何冊かの本を読んできましたが、今回読んだこの本は、路地出身者としての自分自身の学校における解放教育との関わりを中心に、解放同盟と教職員との対立から起こった八鹿高校事件や日の丸君が代で校長が自殺した世羅高校事件、そして同和教育の現在について記したものでした。
 非常に興味深く読むことができました。そして、これまで取り組まれてきた同和教育の意味というものを考えさせられました。私もその影響を受けてきた部分もあったので、自分自身の教師としての歩みをこの本を通して教えてもらったような気がしました。この本に登場する教師は、他人事ではなく、当事者としての意識を持って読めたような気がします。そしてその教育がはたして本当の意味での教育となっていたのか、そのことさえも考えさせられました。
 上原善広の本に少しこだわって読んでみたいと思っています。

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by shin-pukupuku | 2017-08-03 10:29 | | Comments(0)

8月号

 『歴史地理教育』8月号を興味深く読みました。 もっとも目に留まったのは、「佐原で学ぶ伊能忠敬の授業」でした。どうしても私は実践に目がいくんです。 この実践は授業者である安井和子氏が定年の年に取り組んでいる実践のようですが、子どもたちが次第に地域の歴史に興味関心を持っていく様子がよく書かれています。 その大きな要因となったのが、伊能忠敬が作成した「大図」を体育館に拡げて現在に残る地名と重ねてみたことでしょう。子どもたちは実際の地図を見ることで、伊能忠敬のすごさと作成についての疑問を持っていく様子がよくわかります。実物教材の魅力が子どもたちに知的刺激を与えたようです。この大図によって一挙に子どもたちの興味関心は高まっていったのでしょう。訪問した記念館の職員から「こんなに熱心に学んでいる学校はめずらしい」という言葉は、子どもたちの学ぶ意欲の状況を示すものだと思います。 安井和子氏は、当初から大図を利用する計画はしていなかったようです。記念館の人に勧められて実践に取り入れたようですが、ここには記念館の「人との出会い」がキーポイントになっていると思います。実践を豊かにしてくれる大きな要素の一つに、人との出会いがあることは言うまでもありません。
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by shin-pukupuku | 2017-07-31 09:11 | | Comments(0)

「発達障害」

 岩波明『発達障害』(文春新書)を読みました。DSM-Ⅴが出されて、発達障がいについての分類や内容がどのように変わってきたのかが良く分かりました。ASD(自閉症スペクトラム障害)やアスペルガー、ADHDなどの違いが自分の中で混乱していましたので、この新書で整理できました。また、思った以上にADHDが割合が高いということもわかりました。LDについては、文科省の分類とDSMーⅤとの違いがあることも分かりました。
 明日、発達障害と生徒指導について現場の先生方に話をしますが、臨床心理学的な話はできませんので、あくまでも「法と人権」で迫りたいと思っています。大阪豊中市で20年以上前に出たいじめ判決は、知的障害や情緒障害の女子生徒がやがて二次障害に陥り、不登校や非行問題を起こしますが、最終的に加害者に殺害されてしまいます。この判決書を活用した話をしていきたいと思います。うまくいくかな?ちなみに参加者は130人だそうです。不安です。

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by shin-pukupuku | 2017-07-25 09:18 | | Comments(3)

今月号

 今月号の『歴史地理教育』は、「日中開戦80年から学ぶ日中交流」というテーマでした。メインは、南京での授業交流でしょうか。日中全面戦争のきっかけとなった七月七日の盧溝橋事件に合わせて、この特集を組んだと思われます。
「南京事件を掘りおこす」という小野賢二さんによる聞き取り調査活動に対するインタビュー記事もなかなか興味をひくものであったと思います。小野さんの話は、従軍した兵士への従軍日記を31冊発掘した事実を示し、その事実だけでも「南京事件」の歴史的事実を教えてくれています。また、従軍兵士へのインタビューによる証言においても、そのことを科学的に証明していると思います。
 上記の内容を最初に押さえて、現状としての日中による授業交流を紹介しています。その中で、南京市の中国の先生が、「歴史学習が持つ価値とは、生徒の価値観の形成を助けることである。授業で生徒に歴史を振り返らせ、歴史を記憶し、理性をもってそうした歴史に向き合うことを求める。最終的に平和を守るというテーマ、方向性を持つことが目標である。授業内外の交流や討論、分析など、生徒は考えることで、自分自身の価値観を形成できる。つまり、歴史から現在を見ることで、未来に灯りをともすことができるのである。」と述べていることは、注目すべきものであると思いました。日本の歴史学習よりも、中国の方がより進んでいるのではないかと思います。

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by shin-pukupuku | 2017-06-29 05:37 | | Comments(0)

 この本は台湾の歴史を学ぶにはコンパクトでわかりやすく、ベーシックなものになる文献だというのが第一印象でした。
 また、私にとっては新しい知見を教えてくれるもので、かなり楽しく知の歓びを感じながら読み進めていきました。
 もっとも印象深かったのは日清戦争後の日本への植民地化への抵抗です。それなりの抵抗はあったのだろうなという予測はしていましたが、日本占領の前にアジア最初の共和国として台湾民主国が誕生したことは知りませんでした。そして、日本軍が台湾に侵攻して、その台湾民主国が崩壊し、土匪の抵抗が続いたことについても、この本で詳しく知ることができました。
 台湾は、これほど日本に近い国なのに、その歴史について私たちは知らなさすぎるのかもしれません。

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by shin-pukupuku | 2017-06-12 06:11 | | Comments(0)