カテゴリ:本( 225 )

蔡英文『新時代の台湾へ』を読んで

 今朝の朝日新聞の記事では、「蔡政権内憂外患」とあり、支持率が総統就任当時の52%から30%に落ち込んだと書いてありました。「対中国弱腰批判も」という見出しもあります。台湾の民進党は基本的に中国からの「独立」志向でありますが、蔡政権は現状維持を訴えてきました。
 タイトルの本は、蔡英文が総統になるまでの基本政策についての自分の考えを書いています。それは、民進党の綱領にしばられた政策ではなく、台湾全土をくまなく回り、そこで出会った民との出会いを通して政策立案がなされていることを紹介していました。特に、2014年に立法院を占拠した「ひまわり運動」の中心であった若者に対する期待や思いを大事にして、台湾の未来を切り開いていこうという姿勢をこの本から感じました。
 台湾の民主化はこの30年あまりと日が浅いですが、日本以上に民主化が進んでいるような気がします。それは、この国を思う多数の民に支えられているからでしょう。10年後20年度にに台湾はどうなっているかはわかりませんが、大国の狭間のなかにもかかわらず、蔡総統のようなリーダーが続くかぎり、民主的な社会づくりは進んでいくことでしょう。台湾を訪問するために、この国の活力を感じます。

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by shin-pukupuku | 2017-05-18 09:34 | | Comments(0)

坂野徳隆『日本統治下の台湾』を読んで

 著者は私と同じ年。記者から小説家に転向し、台湾に在住しながらノンフィクション作品を発表してきた方です。

 この本の特色は、内地から台湾に移り住み新聞などで風刺画を発表し続けた国島水馬の作品に注目し、その風刺画を見ていくことで日本統治下の台湾を分析していくというものでした。

 台湾で活躍した国島水馬は、上手に検閲をすり抜け、批判的な漫画をたくさん発表しています。その風刺画を見るだけで楽しくなってしまうという感じの本でした。同時にその風刺画を追いかけることで、台湾の歴史を学ぶことができました。

 頭を休めるためにはこんな本が最適です。


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by shin-pukupuku | 2017-05-13 09:51 | | Comments(0)

グローバリズム以後

 エマニュエル・トッドの『グローバリズム以後』(朝日新書)を読みました。ドットはフランスの歴史家で、家族人類学者、人口学者のようです。これまで、ソ連崩壊や米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言した人のようです。
 トッドは、EUについて、「今は解体の時期です」と断言します。そして、「移民をめぐる危機は、ただ英国だけでなく、様々な様相で欧州解体の最終局面をもたらしつつある」と述べています。
 彼のEUについての今後の動きについての言説を考えると、来月のフランス大統領選挙は、ルペンが勝つのではないかと思われます。まさしく移民問題を口実にして、ルペンはフランスのEUからの離脱を政策として述べているからです。
 マスコミ報道の状況からは、対立候補であるマクロン氏が圧勝しそうですが、トランプ大統領がそうであったように、選挙の結果は最後までわかりません。
 もし、そういう結果になれば、まさしく今世界は内向きに進みつつあるということが言えると思います。ナショナリズムの高まりを感じます。

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by shin-pukupuku | 2017-04-27 14:43 | | Comments(0)

ブラック部活その2

 最新の『季刊教育法』192号では、ブラック部活を特集しています。特集は2回目のようで、座談会を取り入れてブラック部活動の実態をあぶり出そうとしています。「それでも部活はやめられない」という中学校教諭の論考には、現場経験者として首肯する部分が多く、多忙の渦に巻きこまれる実情がよくわかりました。H中学校でサッカー部の顧問であった時の苦悩を私も思い出すことでした。
 それにしても、なぜこのように部活動をめぐって教師のブラック化が問題になってきたのかが私にとっては問題意識としてありました。以前から、中学校の部活動についてはその問題性は問われていましたし、教師の多忙化についても言われ続けてきたことです。
 この特集はそのことについてのヒントを教えてくれました。昔は、教師の勤務をめぐってはかなりおおらかなところがありました。夏休み中は夏休みとして休む時間が十分にありました。勤務時間も長期休業中は9時~4時という慣習も有り、先生方も部活動を午前中にやると、そのまま姿が見えなくなるということもよくありました。それは、今から考えると、授業期間中の超勤を帳消しにする作用があったのだと思います。だから先生方も我慢できたのだと思います。家族との触れあいも長期休業中の時間でごまかしていたのでしょう。
 ところが、2000年代になってからでしょうか、新自由主義の考え方は教師の働き方にも大きな影響を与えました。保護者は児童生徒は教えるー学ぶという関係から解き放たれ、公的サービス提供者とサービスを受容する市民、消費者という関係になってしまいました。そのため、「市民の目」という形で、教師の勤務は囲まれていったようです。
 今では、長期休業中でも勤務時間は平常と同じで、部活動が勤務時間外にやらざるを得ない時も、その分の残業時間代は無視されるという状況があります。勤務時間変更の配慮もありません。やむなく教師たちは職員室でやるべき仕事もないのに、談話して時間をつぶしている状況があります。
 そして、何よりも、高校入試の推薦制度が部活動のブラック化に影響を与えたのではないかと思います。生徒たちは内申書の記述に部活動の記録があることを知っています。保護者は当然ですが、高校側もその内容が合格への一つの要素としてみています。このことで、教師、生徒、保護者がいっしょになって部活動での成果を手にしようとするわけです。
 部活動のブラック化については、今後も関心を持って見ていきたいと思っています。

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by shin-pukupuku | 2017-04-23 10:28 | | Comments(0)

今月号は…

 今月号の「歴史地理教育」についてです。特集は、「『道徳の教科化』と社会科の授業」という魅力的なもので、かなりワクワクして読みました。ところが、内容は期待外れでした。二本の論文は、道徳の教科化は戦前の「修身」の復活であり、国家的な道徳がつくられ、民主的な社会をつぶしていくことになるという結論でした。基本的に私も同感ですが、ではどのように現実問題として位置づけられた「特別の教科道徳」を教えていくのかという視点が弱いと思いました。たしかに、その後の実践3本がそれに応えていると思われますが、すべて社会科の実践なんですよね。社会科関係の雑誌だから当然と言えば当然なのですが、しかし、物足りなさを感じました。
 若手の道徳教育の研究者である柳沼良太(岐阜大学)や松下良平(金沢大学)の研究の成果をどのようにとらえ、そして現場実践として実らせるかという視点が、必要だったと思います。
 私は基本的に道徳の教科化には反対です。しかし、学習指導要領で決まった以上、これからはこの道徳でどのように子どもたちを育てていくかという視点が大切であると思っています。戦前の天皇制国家と重なるような方々は、この道徳教育で話題の教育勅語を利用して、授業化しようと考えているはずです。それに対抗した授業実践レベルでの取り組みがこれからは求められていると思います。

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by shin-pukupuku | 2017-04-21 09:30 | | Comments(1)

『共生保障<支え合い>の戦略』を読んで

 宮本太郎『共生保障<支え合い>の戦略』(岩波新書)を読みました。宮本は、中央大学教授で政治学、福祉政策論を専門にしているようです。岩波新書では以前、『生活保障 排除しない社会へ』という著書を記しています。また、宮本は政府の福祉政策の委員会に関わっている方で、日本の福祉政策の一人者と呼べる方だと思います。
 宮本は、日本においては、1990年代の半ばから、介護保険制度および障害者自立支援制度の成立、さらに子育て支援新制度の導入に見られるように、準市場の制度を軸にした普遍主義的改革が進められてきたが、財政的困難、自治体の制度構造、中間層の解体という三つの構造的ジレンマに制約され、その普遍主義的改革がうまくいっていないことを述べています。普遍主義的改革とは、選別主義に基づく、一部の選別された社会的弱者に対してのみ社会保障や福祉を提供しようとする考え方ではなく、支える側も支えられる側もともにサービスの対象にしていこうとするものです。それが共生保障という考え方だと主張します。
 私はこの本を読みながら、宮本の述べる共生保障に共感することでした。たしかに、選別主義ではなく、支え、支えられるシステムが求められる状況は現実的にたくさんあります。たとえば、私の義母なども、共生保障という考え方で社会福祉のサービスを受けられたら、どんなに幸せな毎日を送ることができるかと想像します。高齢者となり、自分のできないところは共助で支えてもらう、また、共助を通して別のところでは必要とされるサービスに参加することも可能だと思います。公助は必要不可欠な要素であることは言うまでもありませんが、自助、互助、共助、公助をうまく組み合わせながら共生していく社会づくりというのは、魅力的なものだと共感することでした。
 宮本太郎のこの本は、研究者としての学問的裏付けのもとで記されたものであり、非常に説得力のある理路整然とした大衆向けの啓発を目指した著書だと思いました。

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by shin-pukupuku | 2017-04-10 09:27 | | Comments(0)

教育政策の四つのパラダイム

 昨日、目を通した藤田英典「教育政策の責任と課題」『岩波講座教育変革への展望6学校のポリティックス』の論考を読んで、心に残った部分は次のところでした。
 藤田は「教育政策の四つのパラダイムとその展開」について、ハーグリーブスとシャーリイの論述内容を参考にして、わかりやすく整理しています。
「…政策の関心・焦点は、豊かな学びと子どもたちの幸せにある。保護者や住民・市民には積極的信頼が期待され、教師には、保護者や住民・市民の積極的信頼に応えるためにも専門的資本の蓄積・向上に努めることが重要となる。そして、以上のことが実現していく過程で、三つのアクター間のコミュニケーションが拡大し、種々の技法が伝播・普及し、システム・レベルでの一貫性が確立していくことになる。…」
 上記の教育政策を「第四の道」として、藤田は好意的に紹介しています。
 私はこの第四の道を学んで、私たちが必要としてきたのは、これではないかと深く感じました。それは、現場に身を置いて保護者からのクレームに苦しみ、教員への評価制度や全国学力テストが始まり、息苦しい現場の雰囲気を感じてきたからだと思います。
 アカンタビリティやエビデンスなどの用語が現場でも次第に浸透しつつあります。その内容一つ一つは意義深いところもありますが、その背後にどのような教育政策上のねらいがあるのかを私たちは見抜いていく必要があります。そのことを上記の論考は教えてくれました。

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by shin-pukupuku | 2017-03-29 06:40 | | Comments(0)

『対話する社会へ』を読んで

 暉峻淑子『対話する社会へ』(岩波新書)を読みました。
 今、そしてこれからの社会における市民にとって必要なものは『対話』なんだろうなあと納得しながら読み終えました。
「第五章対話する社会へ」で「希望の実例」として示している「行政と住民との対話でつくられた道路」では、街づくりにおける住民と行政との対話によって、行政側と住民側の理解が深まり、より住みやすい街づくりの成功例が出ています。そこには、行政側の理解者とコーディネーター役の人物の力が大きいのですが、何度となく行われた対話の努力によって、民主主義が生かされ、街づくりが成功していったわけです。
 私は、この対話が、市民性にとって非常に重要な要素になるのではないかと思っています。これまでもさまざまな哲学者が、対話の重要性を唱えてきましたが、この対話力というものは、学校教育において学習すべきものではないかと思います。特に社会科の役割は大きいでしょう。
 授業で対話力を育成していくことがより一層求められるのではないかとこの著書を読んで思いました。そして、自分自身もそのような授業づくりを心がけようと思っています。何分に、授業を受ける学生は少人数ですので、対話型の授業は可能だと思っています。チャレンジです。教師の臨機応変の力量は問われますが、授業というのは実はそこのところが面白いところだと思っています。みなさんもいかがでしょうか。

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by shin-pukupuku | 2017-03-16 14:35 | | Comments(0)

「ふしぎな部落問題」を読んで

 角岡伸彦『ふしぎな部落問題』(ちくま新書)を読みました。部落問題へのアプローチもここまで変わってきたんだという印象を持つ本となりました。それまでの部落解放運動について、私なりに賛同することもたくさんありましたが、違和感を感じることもたしかにありました。その「感じ」に対して明確にこの本は示していると思いました。
 たとえば、第二章の「メディアと出自」での『週刊朝日』に取り上げられた元橋下知事の出自についての報道や第三章の映画「にくのひと」が上映されなかったことについての一連のインタビュー記事は、著者の素直な疑問を大事にして追求したものだったと思います。部落解放運動がこれまで果たしてきた成果というのは大きなものがあることは言うまでもありません。朝ドラの「べっぴんさん」で主人公のすみれが、よく「なんか…」という言葉を出す場面があります。それと同じで、「なんか…」というところがに対して、角岡はペンを進めていると思いました。
 そして、第五章の「継承と挑戦-部落解放運動の転換期」という章では、これまでとは違う運動の取り組みが紹介されています。就職差別や結婚差別は今でも存在すると私は思っていますが、これからの運動には部落を越えた人間的なつながりを大切にする未来のあり方が必要なのかもしれません。それは被差別部落が大事にしてきたコミュニティをさらに発展させていく取り組みでもあると考えます。今後の日本社会におけるコミュニティの崩壊に対抗するものとして、被差別部落が培ってきた人間的な関わり合いはプラスとなって広げていくことが可能であると私も思います。そのことを角岡は最後の章で示してくれているのです。

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by shin-pukupuku | 2017-03-15 09:34 | | Comments(0)

『2020年からの教師問題』

 暇つぶしに読んでみました。書いてある内容は、私の中ではそれほど新規性を感じませんでしたが、AI社会に向けて、新たな学力を示し、教師サイドがいかにその学力のもとで授業を創り上げていくかという点では共感できました。同時に、私が思っていたこれまでの授業についてのモヤモヤ感をクリアにしてくれたのではないかと思いました。
 大学入試の改革は、もうそこまで来ていますが、学校の授業改革は現場では進んでいるのかという問いかけがこの本にはありました。現場の先生方は日々努力していると思いますが、文科省がアクティブラーニングという教育方法を提起しているように、官主導で授業改革が進みつつあると思います。しかしこのことは、文科省が声をあげないと、現場の授業改革が進んでいかないということを証明しているような気がします。
 この本を読んで、まず自分が授業改革をしようと思いました。新しい科目は、講義式をできるだけやめて、意見交換する授業スタイルに変えようと思います。つまり、教育内容を事前に配布するか、授業の最初に読んでもらい、その内容についての私が示す考察の視点から、議論していくという形にしようと思います。どの科目も受講者は少人数ですので、この方が教える私も楽ですし、学生も大きな学びになることでしょう。成功するか失敗するかわかりませんが、まずはチャレンジです。
 最後に、この著者は私の出身大学と同じで、学部専攻は一つ下の後輩とまったく同じでした。しかもその後輩と同じ年なので、後輩に聞けば知っている人かもしれません。

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by shin-pukupuku | 2017-02-27 09:28 | | Comments(0)