保育格差

 小林美希『ルポ保育格差』(岩波新書)を読みました。
 なぜ専門職にもかかわらず、保育士の給料は低いのかという問題意識がありました。最近は政治の動きもあり、待遇改善が図られつつありますが、現状のところはそれほど待遇改善という結果につながっていないようです。その理由をこの著者は明らかにしていました。
 基本的に、国や自治体によって補助金が増加しているわけですが、その補助金は人件費というしばりはなく、他への流用が認められているようです。そのため、保育士への給料増額へとストレートにつながらず、特に株式会社による運営では新たな施設を作るために人件費の割合が抑えられているというルポの結果でした。
 この本では人件費比率の低い保育所一覧を実名でしめしています。そんな実名で示して大丈夫かなあという不安を感じましたが、基本的に東京ではすべての施設に公開するように義務付けているようです。著者はそれをまとめて整理しています。やはり情報公開は大事なことだと思います。昨日、早速、保育士志望の学生たちにこの本を紹介し、一覧表を見せました。すると、その部屋にはまさしくその一覧の上位に何度も出てくる保育所のポスターが大きく貼られていました。学生に聞くと、「待遇が良いように思った」とその保育所について感想を語ってくれましたが、その一覧を見て、さらにしっかりと求人票を見ていく必要性を感じたと思われます。
 この本の最後の方で書かれていた心に残る文章は、
「経済合理性という考え方が日本を支配しているが、子どもは対極にある。マニュアルは効かず大人の思う通りにもいかない、最も大切な人間的な世界。自分と違う存在と共生し、学ぶことで新しいアイディアがわき、新たな文化も生まれる。子育ても保育も、手間をかけずに経済合理性を追求できるものではない」

 お茶の水女子大学の牧野名誉教授の言葉だそうです。保育という仕事に、経済性の観点から合理化することは人間を人間らしく育てることをやめてしまうことだと共感しました。

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by shin-pukupuku | 2018-05-22 05:57 | | Comments(0)

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