今月号のMMマガジン~防災教育関連

  MMマガジンの原稿が掲載されました。 今回は校正が不足していました。第2回目の原稿の最後が一番後ろに残っていました。またしても大きなミスでした。こんなことではだめですね。このブログではその部分を消しています。 今月号は、防災教育に関することです。長いですが、読んでいただければと思います。───────────────────────────────────
□■□ MM小学校教師用ニュースマガジン □2355□ 
───────────────────────────────────

判決書事例で学ぶ安全教育 第16回 
 ~防災に対しての教師対応の学びのために~その2  
        
                 
1.はじめに
 今回は第2回に続いて、防災についての学校安全について、判決書事例をもとに見ていきたいと思います。
 東日本大震災津波被害で犠牲となった東松島市立A小学校児童の遺族が訴えていた損害賠償請求の判決書事例を取り上げたいと思います。
 先月5月30日に最高裁で判決が出ました。結果は、市の上告を退ける決定でした。
 地震発生後に、同級生の保護者に児童を引き渡した学校側の過失を認め、2600万円あまりの賠償額が示され、判決が確定しました。東日本大震災における津波被害による訴訟で、最高裁が示した初めての判決でした。内容は、第1審仙台地裁、第2審仙台高裁の判決を支持したものでした。
 今回は、津波被害によって起こった「A小学校引き渡し津波死亡事故」(仙台高等裁判所平成29年4月27日判決)を事例として取り上げます。なお、この裁判では、避難場所を体育館だけにしたことで、体育館で地域住民が18人死亡したことについても遺族が訴訟を起こしていました。これについては校長には津波被害の予見可能性がなかったということで遺族の訴えは退けられています。本稿ではあくまでも引き渡しによる津波死亡事
故に焦点化します。

2.事件の概要
 9歳の児童Dは、帰宅後そろばん教室にいましたが、東日本大震災の地震に遭遇し、学校の体育館に避難しました。児童Dの担任は、引取責任者ではない同級生の保護者Fが自宅まで送り届けるという申し出を認めました。その保護者Fは自宅に児童Dを送り届けましたが、その際、未成年であるDの従兄弟らにしか会っておらず、災害時児童引取責任者である祖母らを見かけていませんでした。その後、自宅家が津波によって被災し、児童Dは死亡したという事件です。遺族が市教育委員会に対して、学校・校長に安全配慮義務違反があったとして損害賠償を請求したものです。
 
3.判決の内容
 裁判の結果は原告側(遺族側)が勝訴しました。市教育委員会と学校、校長は過失責任を問われ、児童Dの遺族に2600万円余りの賠償金の支払いが命じられました。
 先述しましたように、最高裁の判決でしたので、この損害賠償請求の裁判は確定しました。
 私たちは、この事件の教訓から子どもたちのいのちを守るための対応を学ぶ必要があります。

4.学校側の対応
 では、校長をはじめ学校の先生方はどのような対応をとっていたのでしょうか。裁判の記録を読むと、次のような様子が見えてきます。

 A小学校では、地震が発生した時点で放課後であったが、約70名の児童が下校せずに残っており、教職員はそのほとんどが在校していた。教職員らは、地震発生後、直ちに在校していた児童の安否確認を行うとともに、外部と連絡を取ろうとしたが、すぐに停電となった。在校していた児童らは、教職員らとともに教室や校庭で待機した。
 校長は、地震後にも大きな余震が続いており、校舎の柱や壁にはひび割れが発生し、教室内は机や学習用具が散乱したことなどから、教頭と相談し、防災計画上避難場所として表記された体育館に避難することを決め、教諭らにそれぞれ指示を出した。
 教頭は、災害時の情報収集に関する責任者であったため、地震に関する情報を得ようと試みたが、職員室内のテレビやラジオはいずれも停電のため使用できず、インターネットにも接続できなかった。教頭は、震度6強の揺れを観測したという情報を入手したにとどまり、津波に関する情報を得ず、また、そのような状況である旨を校長に報告することもしなかった。
 校長は、情報収集を教頭に委ねていたため、結局、津波が小学校に到達するまでに津波に関する情報を得ることはなかった。

 教務主任を務めていたMは、地震後に体育館の状況を確認して校長に報告した後、体育館が避難所になるのに備えて、体育館のピアノの上に市が配布した電池式の防災ラジオを設置し、電源を入れてAM放送局の周波数に合わせ、その前にマイクを置き、ピアノの下にスピーカーを設置して、その旨を校長に報告した。ラジオからは、地震関係のラジオ放送が流れており、マイクとスピーカーを通して、近寄ると内容を聞ける程度の音量でその後も流し続けていた。
 M主任は、児童や近隣からの避難者への対応が一段落したところで、自分の携帯電話をインターネットに接続したところ、大津波警報が出ていることを知り、体育館にいた避難者に向けて、ハンドマイクでその旨を3、4回知らせたが、それから間もなく津波が小学校に到達した。

 校長は、体育館内にいた教諭らに対し、災害時児童引取責任者を記載した災害時児童引渡し用の名簿を使用させることなく、児童らの引渡しを受ける者の名前と関係が確認できれば児童らを引き渡してよい旨の指示を出し、これに従って、Dの担任であった教諭は、Dの同級生の父であるFから、自宅に送り届ける旨の申出を受けて、災害時児童引取責任者ではないFにDを引き渡した。担任がFにDを引き渡すに際して、保護者と連絡がついて、その意思が確認できたような事情はなく、Fが災害時児童引取責任者であるDの祖母から引取りを依頼されていた事実もない。Dの自宅は海側の海抜1.9メートルの地点に位置しており、DをFに引き渡す方が、小学校において保護を継続するよりも安全であることが明らかであるといった事情も認められないから、Dを災害時児童引取責任者ではないFに引き渡すことが例外的に許容されるような特段の事情があったということはできない。

5.何を学ぶべきなのか。
 この事例から、わたしたちが学ぶべき教訓は貴重です。 裁判所の判断では、「Dは、当時9歳の子供であり、未だ判断能力が十分とはいえず、
自らの判断で大きな余震が続く緊急事態下の不測の危難から自分の身を守ることはできない。校長は、災害時児童引取責任者ではない者に引き渡した場合には、Dが様々な危難に対して適切な避難行動をとることができず、Dの生命又は身体に危険が及ぶことを予見し得た。それにもかかわらず、担任教諭らに対し、災害時児童引渡し用の名簿を使用しなくとも、児童らの引渡しを受ける者の名前と関係が確認できれば児童らを引き渡してよいと指示を出し、担任は、、Dを災害時児童引取責任者ではないFに引き渡した。校長は、Dを特段の事情がない限り、引取責任者以外の者に引き渡すことは許されず、責任者の引き取りがない間は、小学校においてDの保護を継続すべき義務に違反した過失が認められる」としています。

 このように判決は、学校の責任者である校長の過失として断じていますが、小学校の教員として、このような大災害の事態の時にとるべき対応は何だったのでしょうか。

 一つは、情報収集と連携です。上記の事実からわかりますように、教務主任Mは防災ラジオを持っていました。そしてそれを体育館でスピーカーを通して流しているのです。その中では大津波警報が流され、情報収集は可能でした。裁判所は次のように述べています。
「防災ラジオや教職員らの自動車に搭載されていたカーナビやラジオ、他の教職員らや避難者の携帯電話のインターネットやワンセグ機能、防災行政無線等を利用して、公表されていた気象庁の発表や各報道機関の報道から津波に関する情報を入手することは十分に可能であったものと認められる。」
 災害時の重要な取組として情報収集を確実に行うことが求められます。収集がうまくいかない時は、教職員全体でアプローチしていくことが大事です。そして校長・教頭に収集した情報を伝えることが重要だということが分かります。
 この情報収集と連携については、別の判決書事例(第2号で紹介したH幼稚園バス事故や大川小学校裁判)でも全く同様のことが指摘できます。
 2つ目は、防災教育指針など政府や県、市が現場に通達しているものを、いのちに関わる安全教育においては、確実に確認し、研修しておくことです。この判決でも、「みやぎ防災教育指針」が重要な証拠として示されています。この指針は宮城県教育委員会が平成21年2月に発表したもので、学校における防災管理や災害時の体制整備について記され、児童等の安全確保方策の欄には次のような記載部分があったと判決書は指摘しています。
「防災教育指針では、災害発生後に学校に避難登校してくる児童等についても、学校に居残っていた児童等と区別することなく保護することとされていたから、本件校長は、保護者の保護下にない状況で体育館に避難してきたDについても、その生命、身体の安全を確保するために適切な措置をとるべき義務を負っていたというべきである。」
 学校からいったん下校し、別の施設に行っていた児童については、一般的に学校の管理下から外れていると思われます。しかし、本判決では、上記の指針を示し、災害などの場合は管理内として扱うことを示しています。
 また、言うまでもなく災害時の引取責任者については、学年度当初に事前に保護者から確認をとり、災害時には特別な理由がない場合はその責任者以外には引取をお願いせず、学校で預かるということが求められるということです。判決では電話で保護者と確認をとり、受取に同意した場合は責任者以外でも大丈夫であるように書かれています。引取責任者を複数事前に登録してもらうことも必要であると思われます。

 本判決は、災害時の引取について貴重な教訓を残していると思います。学校教師は、本判決を通して、引取責任者に確実に確認した上で、児童を引き取らせることが求められます。
 実際の場面では、好意的に引き受けようとする保護者はたくさんいます。この事例でも「うちの娘といっしょに乗せて自宅まで届けますよ」と申し出てきたのでしょう。しかもよく知っている保護者であれば、その好意的な申し出を引き受けてしまうのは現場ではあり得ます。この事例は、結果論で、その好意が最悪の結果になってしまったと私たちは考えてしまいがちです。しかし、この教訓は、今後の引き渡しについての学校側の対応につ
いて指針を示したとも言えます。
 確認が取れない場合は、学校で預かることの大切さを教員は学ぶ必要があります。
 
 ───────────────────────────────────

編集者の心に残った言葉



教頭は、震度6強の揺れを観測したという情報を入手したにとどまり、津波に関する情報を得ず、また、そのような状況である旨を校長に報告することもしなかった。

いつも大丈夫だからと、つい楽観的に考えてしまいがちな私には、とても大切な教訓です。
数十年に一度のことかもしれない、百年に一度のことかもしれないと慎重に考えて、対応することが大切ですね。
辛いことですが、東日本大震災で適切な判断をして子どもたちや同僚、近くの住民の命を救った教師からも学びたいと思いました。

───────────────────────────────────

[PR]
by shin-pukupuku | 2018-06-14 06:19 | 教育関係 | Comments(0)

なにやら思いついたことをつれづれなるままにⅡ


by shin-pukupuku